ビーズステッチアソシエイツでは、「デザイナーズセミナー」と題してアソシエイツ会員対象の講習会を1年に2回くらい開催しています。毎回お一人のデザイナーの作品を、デザイナーご本人に全国で指導していただくという企画です。デザイナーの選考基準は、ビーズコンテストで上位入賞しているなどデザイン力が社会的に認められていることと、お教室での指導経験が豊富にあることの2点です。
今年9月のデザイナーズセミナーには、澤口恵利さんにご登場いただくことになりました。今回の澤口さんのテーマ作品の「金魚」は私からのリクエストでもあるので、そのいきさつと澤口さんについてお話しさせていただきます。
澤口さんは、ビーズステッチアソシエイツが誕生した2005年に本部が開催した「育成セミナー」の1期生です。当時の澤口さんは、ビーズステッチは初めてだったようで、教わったことをすぐに完璧にできるというよりは、一つ一つ確かめながらゆっくりと覚えていくというタイプでした。私自身、編み物の専門学校に通っていたときには落ちこぼれで、手仕事を覚えるということにどれほど得意不得意があるかを身に染みて知っていました。だからこそ、最初は上手にできなくても、少しずつ努力して上達していく澤口さんのことを昔の自分と重ね合せて応援していたものです。
そんな澤口さんが、育成セミナー直後に出版された「VENETIAN BEADS STITCH」に出品した作品を見たときには本当に驚きました。そこには、一人のデザイナーとしてビーズと向き合っている姿があり、想像力と独創性の片鱗がすでにありました。その後の澤口さんの創作活動については、彼女のホームページでプロフィールを見ていただければわかります。
今回のテーマ作品の「金魚」に話を戻しましょう。澤口さんのコンクール受賞作品に金魚が登場したのは、ビーズアートジャパン大賞2008で審査員奨励賞に輝いた「大連への想い」でした。たくさんの思い出のビーズの中に何匹かのガラスでできた金魚がいたのが印象的でした。そして昨年のビーズアートジャパン大賞2011では、「REINCARNATION〜輪廻転生〜復興を祈って」という作品で審査員特別奨励賞を受賞されました。これは審査員のお一人で桂由美先生のジュエリーデザイナーである藤原綾子先生が推薦する作品として選ばれたものです。ここには、ビーズステッチで編んだたくさんの金魚が登場します。前回の2008よりもさらに表現力が進化しており、ディテールの精密さと全体の構成が見事でした。
デザイナーズセミナーの作品を依頼するにあたっては、このビーズステッチで編んだ金魚をモチーフにしてほしいとお願いしました。何度も試作を重ねていただき、たどり着いたのは「根付」。江戸時代から金魚売りや金魚すくいなどで庶民に愛され飼育されてきましたが、中国では金運の上がるものとして人気があります。ぜひお財布などにつけて皆さんの金運をアップさせてください。金魚の上に和の雰囲気のあるビーズをつけたのは私のアイデアです。今までにない雰囲気の作品になったと思います。
もう1点のテーマ作品は、前回ご紹介した模様編み集の第2弾「花の模様編み集80」掲載作品です。お花が大好きな澤口さんらしい小花に、大きなフリルが華やかさを出しています。こちらもお楽しみに。
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